卒業生からのメッセージ

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里井 大輝(SATOI,Daiki)

  • 2011年 大分高専 制御情報工学科(現:情報工学科) 卒業
  • 2013年 筑波大学 情報学群 情報メディア創成学類 卒業
  • 2014年 筑波大学大学院 システム情報工学研究科 博士前期課程 修了
  • 2016年 筑波大学大学院 システム情報工学研究科 博士後期課程3年 エンタテインメントコンピューティング研究室(茨城県在住)

?? 現在従事されている研究を教えてください。

さまざまな種類の魚について、生命的なCGアニメーションを自動生成する手法を研究しています 。

?? 具体的にどのような研究なのでしょう?

本研究では、魚のCGモデルを生きているかのように動かす方法 (アルゴリズム) を開発しています。多くの映画やゲームなどのコンテンツでは、「生き物のように見える物体 (キャラクタ)」が登場します。キャラクタを生き物らしくするためには、それらしい動き (モーション) を付けることが非常に重要です。よく使われる方法は3つあります。1つ目はアニメータが手作業で作る方法です。どんなキャラクター、どんな動きにも対応できますが、技術やノウハウが必要となり、手間もかかります。2つ目はモーションキャプチャのように、実際の生き物の動きをセンシング (読み取り) して使う方法です。とてもリアルな動きを再現できますが、人間など一部のキャラクタにしか適用できず、また手間もかかります。3つ目はプログラムを使って動きを自動的にシミュレーションする方法です。これまでいろいろなシミュレーション手法が提案されてきましたが、実際の生き物にみられる動きの特徴 (例えば、俊敏性を感じさせる動きや、知性を感じさせる動き) を再現するにはまだ課題が残されています。

本研究では、アニメーション表現において 「これがあれば生きているように見える」 という要素 (生命的要素) を明らかにすることを目標にしています。生命的要素が明らかになれば、従来技術よりも簡単に 「生き物のように見える物体 (キャラクタ)」 を作り出し、コンテンツへ組み込むことができるようになります。

これまで、身体の構造や振る舞いが比較的単純な 「熱帯魚」 や 「ホタル」 について、突発性や多様性をもったモーションを自動生成する手法を提案してきました。現在は、熱帯魚だけでなく、さまざまな種類の魚の泳ぎ方を再現する手法の開発に取り組んでいます。将来的には、ロボットやイラスト、陸上動物、架空の生物などへ適用範囲を広げることを目指しています。

?? 研究内容について、魅力を感じる点や苦労している点を教えてください。

私が今いるエンタテインメントコンピューティングという研究分野は、「新しいエンタテインメントを創造するための技術を開発すること」 や、 「そもそも面白さとは何か、面白さはどうやって測ればいいのか、を解明すること」、 「教育や福祉などの分野にエンタテインメントを応用すること」 を進めています。 熱帯魚のCGモデルを本物っぽく動かせたところで生活が便利になるわけではありません。しかし、将来この技術を使ってリアリティに溢れた映像を誰もがより簡単に作れるようになったら、きっと面白い何かが起こるでしょう。遊びは人や社会にとって欠かせない要素であると同時に、最先端の技術と芸術が結びついて常に革新を続けています。人に感動をもたらす体験を作り出す、人の暮らしを心の面から豊かにする、というゴールを見据えながら技術開発やものづくりに取り組めることがエンタテインメントコンピューティングの魅力だと考えています。

私の研究に関連した ( = 勉強すべき) 分野は、CG、物理シミュレーション、心理学、認知科学、…果ては流体力学や魚の生態学まで非常に幅広いです。どの分野も素人で、しかも高専時代にサボっていたため数学や物理ができない私はひどい目に遭っています。でも、代わりに視野が広がっていろんなことに興味が持てるようになりましたし、何より勉強する目的を得たことで勉強が驚くほど楽しくなりました (今までの人生で一番楽しいです)。なにしろ動物にあまり興味のなかった自分が、今では水族館に出かけてメモを取ったりビデオを撮ったりして、次は潜りに行きたいと言い出すくらいなのです。 研究はつらいことも多いですが、将来の仕事に活かせるくらいの力をつけたいと考え、もう少し大学院で研究を続けることにしました。

?? 高専時代はどのような学生でしたか?

プログラミングやコンピュータに興味があって高専に入ったものの、最初のうちは将来どうしたいかが全く見えなかったので、とりあえず選択の幅が狭まらないようにと、そこそこ真面目にやってました。3年生の半ばに、ある先輩との出会いがきっかけで 『自分がこれから仕事としてやりたいことは何だろうか? 授業でものづくりを学んでいるけれど、自分は何を作りたいのだろうか?』 と本格的に悩み始めて (こじらせ始めて)、結局3年間ぐらいいろいろと迷走しました。 進路は高専入学当初から大学編入で考えていました。理由は2つあります。1つ目は高専と大学の両方に興味があったからで、2つ目は、一度就職したら大学に入るのは大変ですが、大学に進んでも就職は普通にできるためです。いろんな分野の人がいるところ・都会に近いところに行きたい、応用寄りの分野を専攻したいという理由で筑波大学を受けました。 得意科目は工学実験やプログラミング系の科目で、不得意科目は数学や電気・電子回路、電磁気学でした (今でも苦手です…)。今思えば工学実験のレポートで考察を書くのが好きでした。実験レポートをたくさん書いて (書かされて) きたことは、今の研究生活、特に論文執筆にも大いに役立っている気がします。

?? 情報工学科の学生にメッセージをお願いします。

かつての私のように、将来やりたいことなんて特に見つかっていないのなら、とりあえずは大学編入をゴールに設定して成績を上げるべく頑張ってみるのも良いんじゃないでしょうか。私は大学に来てはじめて、自分自身がこれまで学んできた 「情報系」 と呼ばれる分野がいかに小さい範囲だったかを実感しました。大学には変な授業や変な人達がたくさんいるのです。大学編入で選べる進路は意外に幅広く、私が知る限りでも、大学編入を機に大幅に専門分野を変えた人は何人もいます。まずは、大学や研究室のWebサイトを、情報系以外も含めていろいろ見てみてはいかがでしょうか。 また、アプリや電子工作などの作品コンテストを目指すのもオススメです。結構いろいろあります。作品コンテストでは、自分たちが 「これあったらいいなあ」 と思ったアイデアを形にして、しかも、作ったものが他の人にとっても 「これあったらいいなあ」 なのかどうかが試されます。私は大学3年のときに、7人のチームで 「わっとボトル」 というストレス解消のためのペットボトル型デバイスを作って、コンテストや展示会に出しました。そのときに、いろんな方々が自分の作品で喜んでくれたり面白がってくれたりしたことにやりがいを感じたのが、今の分野に進んだきっかけになりました。

あとは高専の良いところについて。「5年間かけて専門分野を学べる」 「設備が充実している」 などがよく挙げられますが、私は 「身近に研究者がいる環境」 こそが、大学と比べて高専が優れている点だと思います。高専の先生方は、教育者としての顔だけでなく、研究者としての顔も持っています。むしろそっちが本業です。ものすごく退屈そうに授業をする先生も、研究の話になると顔を真っ赤にして熱く語ってくれるかもしれません。研究の面白さというのは、5年生で卒業研究が始まったら勝手に先生が教えてくれるというものでもありません。ぜひ先生の部屋へ遊びに行って、先生自身の専門分野について聞いてみるのをオススメします (大学では、高専ほど簡単には先生の部屋へ遊びに行けない感じなのです…)。また、大分高専ではテクノフォーラムのような技術講演会も度々開催されています。タダで入れるはずですので、試しに覗いてみましょう。面白い発見があるかもしれません。