近年の工業技術の進展とともに、農工連携技術や農業の工業化のさらなる発展が期待されています。この発展を促進する上で、農学の素養を持った工業(工学)技術者の育成は大切な視点の一つであると考えます。工業技術者を育成する学校として、このような視点で技術者を育成する教育プログラムを構築したいと考え、アグリエンジニアリング教育プログラム(AE教育)を立ち上げました。
このアグリエンジニアリング教育プログラムでは、専門性のある工業技術の深い修得を前提として、農学や農業の基礎を広く俯瞰し、いきものを扱う難しさと喜びを知り、生産をシステム全体としてデザインする経営の視点を持った工業技術者の育成をめざします。
このために、工業高等専門学校(高専)の本科5年間と専攻科2年間(学士(工学))で、学生個々の専門教育の上に横糸教育としてアグリエンジニアリング教育プログラムを組み込みます(図1)。高専教育は早期技術者教育を行う高等教育機関であるため(図2)、本科高学年(大学の1年生)で専門工学の基礎が身についているので、このような横糸教育が可能となります。
カリキュラムでは、
1)工業技術者のための農学の基礎、生物学基礎、の知識の修得。
2)実習:基礎実習やPBL学習によって「いきもの」を扱うセンスあるいはいきものを生産する難しさと喜びも体験する。
3)実地見学や講演などを通して、農業分野も工業技術者の活躍できる場であることを理解してモチベーションを醸成する。
4)生産をシステムとしてデザインする視点を養う。
ことをめざします。(例を図3に示します。)
図3において、専攻科1年に開講の「工業技術者のための農学概論」の講義では、このためのテキストを農学部や農研機構等の諸先生方にご執筆いただいて作成することとしました。目次は以下の通りです。
1章 農学と工学
2章 植物の生理と生産
3章 土壌と肥料
4章 栽培管理
5章 稲作とお米
6章 園芸作物と生産
7章 播種と育苗
8章 農産物の貯蔵・加工・流通
9章 畜産物と食
10章 水産物と食
11章 食品の安全と食品加工
12章 バイオテクノロジー技術
現在は、一関高専、大分高専、都城高専をネット回線(WEB講義システム)でつないで3校の学生へ講義を行っています。(「お問い合わせ」の欄の「5つのお願い」参照)
このアグリエンジニアリング教育を多くの他高専の教育に広げていきたいと考えております(「お問い合わせ」の欄の「5つのお願い」参照)。また、本教育プログラムを修得した学生に修了証を発行して(図5)、できれば各自の履歴書に記してもらい、農学の素養を持った工業技術者の存在を社会にアピールし(図6)、農工連携技術の発展、農業の発展に寄与してまいります。
本教育プログラムの充実のためには、農学の知見、農学分野からのご指導が必須です。そのため、外部の委員からなる アグリエンジニアリング教育推進アドバイザー委員会を設置し、本教育プログラムの充実と高専全体や他の工学系高等教育機関への敷衍において、助言を得てまいりました。
■ アグリエンジニアリング教育(研究)概要図1
■ アグリエンジニアリング教育(研究)概要図2
■ KOSEN(4.0)イニシアティブ新展開事業計画書(申請書)