水素分離膜とは?
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水素分離膜とは?
水素分離膜とは、水素だけを通す特殊な金属膜のことです。
近年、研究者たちの間でこれから訪れるであろう水素社会に必要な技術として注目されており、
ある一定の条件下で水素のみを通す性質を持っています。
水素が透過するのだから分離膜には網のように小さな穴が開いているのではないか?と考える人も多いと思います。
しかし、実際には分離膜には穴が開いていません。なのになぜ水素を通すのか------?
これからその仕組みを説明していきます。
普段私たちがふれあう物質は気体を含めてほとんどが分子(原子の集合)として存在しています。
ですが、これから説明する水素分離膜の原理は分子ではなく、原子としての物質の振る舞いが関係しています。
水素分離膜の原理は次の4工程に分かれています。
- ① 混合ガス中の水素分子が膜の表面に吸着される
- ② 膜の表面で水素分子が水素原子に分離する
- ③ 水素原子が金属膜の隙間に入り込み、拡散していく
- ④ 後から来た水素原子に押されるように前へと進み膜を通過した後、原子同士が再結合する
この原理は規則正しく配列されている金属原子の隙間に水素原子が入り込み進んでいく原子拡散という現象を利用しています。
しかしこの隙間はとても小さく水素原子以外の原子では通り抜けることができません。よって、水素原子のみが膜を通過し水素を分離することができるのです。
この性質を利用することで従来の化学吸着式による分離(PSA法)よりもシンプルに高純度の水素を精製することができるのです。
しかし、実用化に向けて以下の課題があります。
- ① 決まった条件下でしか水素が透過しない
- ② 水素を透過した金属は内部に水素が残ってしまい強度が低下する(水素脆化)
- ③ 水素脆化を起こした金属は水素が透過する条件下で壊れてしまう
また、水素を透過する性質を持つ金属は限られているため、材料によらない金属の強度アップが必要とされています。
この解決策として水素分離膜の形状の工夫、組織の制御や合金化による水素透過性と強度の調整があり、実用可能な最適条件を模索するため日々研究を行っています。
水素脆化によって破壊した分離膜と 水素脆化の仕組み
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